Vol.2|清水学習館・清水先生の半生と、心に描く理想の住まい

 

 

「言葉にならない想いを、かたちにしたい。」
 

Pal & Parkでは、「家は“人”を写す鏡」だと考えています。

見た目のデザインだけでなく、“その人がどんな人生を歩み、どんな価値観で人と向き合ってきたか”が、住まいの本質をかたちづくる――

そう信じています。

このインタビュー企画では、人生という設計図をひもときながら、「どんな想いで、今の人生や仕事を選び、人と関わり続けているのか?」という問いを投げかけます。

第2回のゲストは、堺市で小さな塾を営む、清水学習館の塾長・清水先生。

数字よりも関係性のあたたかさを大切にし、一人ひとりの人生に寄り添う塾づくりを続ける先生の言葉は、住まいとは何か、という問いに静かに応えてくれます。

 


 

今回お話を伺った素敵な塾長

清水学習館 塾長 清水先生

  


 

Chapter 1|一人ひとりとちゃんと向き合いたいという思いから

 

大阪府堺市にある「清水学習館」。
(清水学習館の新しい学びの空間づくりには、私たち Pal & Park もご一緒させていただきました。)

パッと見た感じ、そこは塾というよりも「先生の家」に近い雰囲気がある。
建物の外には張り紙はないし、中に入ると、靴を脱いであがるフローリングの空間が広がる。

 

 

そんな空間で、生徒たちは今日も勉強している。
でも、他塾とは違う柔らかい空気が流れているのは、先生が近くにいて、目が届く安心感があるからかもしれない。

「最初は実家の一室で、生徒に1対1で教えていたんです。塾というよりも、“先生の家に遊びに行く”みたいな感覚ですね」
生徒が増えても、廊下にDIYで仕切りを作ってスペースを作っていたという。

だがある日、「もっと良い環境で教えたい」と思い立ち、今の場所へ移転。
机の並び方も、教室の雰囲気も、空気の流れも──全てに、先生の哲学が行き届いている。

 

 

この塾に通う子どもたちが、まるで自分の部屋のように安心して勉強できている理由は、きっとそんなところにある。

 


 

Chapter 2|教える楽しさに出会った日

 

清水先生が「教える」ということに目覚めたのは、大学時代の経験がきっかけだった。

「人に何かを分かりやすく伝えることが、昔から好きだったんです。趣味の車のことでも、塾のことでも、ジャンル問わず。塾のバイトを始めてから、教えるって面白いなと思って」

その想いは、実家でピアノ教室をしていたお母さんの生徒を教えてほしいと頼まれたことから、徐々に現実になる。

1人、2人と生徒が増え、やがて教えることが仕事となった。

「もともと僕は小・中学生時代はまったく勉強してこなかったんですよ。それこそ偏差値も40台で(笑)。でも高校入学直前に自らの意志で塾に通い始めて、自分を変えてくれる素晴らしい先生に出会い、そこからめちゃくちゃ勉強をするようになり自分の人生が変わりました。勉強は今も好きじゃないけど、『やってて良かった』と思える瞬間があるんですよね。その感覚を生たちにも伝えていきたいんです」

勉強の面白さを伝える、ではなく、“やっててよかった”を伝える。
そんな清水先生だからこそ、机に向かうことに抵抗のある子どもたちにも、ちゃんと向き合えるのだ。

 


 

Chapter 3|数字よりも、関係性のあたたかさを

 

現在、清水学習館ではチラシも広告も一切出していない。
それでも塾には生徒が絶えず、口コミで遠方から通う子もいる。

「自分が勉強を教える理由って何だろう?って考えるんですよね。もちろん、生徒が成績を伸ばすことは嬉しい。でも、それ以上に“この人に出会えてよかった”と思ってもらえることが、一番のやりがいなんです」

実家で教えていた時は、自らチラシを作り、夜中まで配り歩いて営業活動をしていた。
でも、結局いちばん響いたのは「生徒とどう関わるか」だったという。

“勉強を教える先生”というより、“人生を共に歩く先輩”のような存在でありたい。

それが、塾という空間ににじみ出ているからこそ、生徒も保護者も「ここに通わせたい」と思えるのかもしれない。

 

 


 

Chapter 4|拡大しない、という選択肢

 

「2店舗目、3店舗目と拡大して収益を増やしていくのが経営者としては当たり前なんでしょうけど…僕はそれは考えていないんですよね」

清水学習館には小学生時代から通い始め、10年以上通塾する生徒もいる。

中学生の頃、厳しい指導を受けて一度教室を離れたこともあったけれども、それでも辞めずにまた戻ってくる生徒。その子を温かく迎える清水先生ーーーこの塾ではそんな親子のような関係性が築かれている。

“拡大”よりも、“継続”。

広げることより、深めることに価値を置く。
それが清水塾のあり方なのだ。

 


 

Final Question|そんなあなたがもし、次に家を建てるとしたら、どんな家を建てますか?

 

「今の塾みたいな家が理想ですね。屋上があって、友達が集まって、バーベキューもできて、小さなお子さんでも安心して遊べる家。そんな風に、誰かが自然と集まってくる空間がいい」

 

建物としての機能性ではなく、空間としての“ぬくもり”が基準になっている。
人生を変えてくれるのは、いつだって「人」と「場所」なのかもしれない。

だからこそ──。
清水先生は、これからもこの場所で、生徒一人ひとりと向き合い続ける。

 


 

あとがき

 

肩書きや規模に頼らず、目の前のひとりと誠実に向き合う。
“広げること”よりも“深めること”にこだわり続ける、清水先生。

その姿勢から伝わってきたのは、住まいとは「整った建物」ではなく、
人と人とのあたたかい関係性が宿る「空間」であるということ。

Pal & Parkはこれからも、数字では測れない想いや、
言葉にならない温度感をすくい取りながら、
人と暮らしの関係が自然につながっていく家を、丁寧にかたちにしていきます。

 


 

編集後記

 

生徒にとって、塾が「勉強する場所」である以上に、
「安心していられる場所」であることを大切にしてきた清水先生。

それは、住まいにも通じる大切な視点だと感じました。

肩の力を抜いて、自然体で過ごせる場所。
静かに見守ってくれるような空気の流れる空間。

清水学習館という場の在り方には、これからの家づくりが目指すべきヒントが、
静かに、でも確かに、宿っていました。

 


 

取材協力:清水学習館 塾長 清水先生